6:23 am 就職活動

「こっちに来なよ」と
その男は私達2人に屈託のない笑顔で手招きをする。
ダンボールが差し出され、それが彼の持つ所持品の中で一番柔らかいものだと悟る。
ブライアンという名のアフリカ系アメリカ人の職業はホームレス。
大学院卒という高学歴を持っていながらも、彼は今何にも縛られない生活を送りたく、
街から街へと移動して、今はホームレスで賑わう地区ここロサンゼルス、スキッドロウに流れ着いた。
いずれは教師になることを考えつつ、つかの間の自由を楽しむ。

資本主義の被害者=ホームレスという図式が成り立っていた私は間違っていた。
彼の目には、自分からホームレスの道を選んだという意志の強さが窺えた。
彼は自分の人生を自ら歩んでいるのだ。
30代と言い張る彼の顔には深いシワが刻まれ、実年齢以上に見える。
しかし、そのシワ一つ一つが彼の生きた軌跡のように見えた。

「何にもしない。ここでボーッと毎日同じ場所にいるのさ。」
「何の為に?」
「さぁね。」

目的がないことが目的。屁理屈にも聞こえる彼の言い分。
でも、いつの間にかやることがないと落ち着かない自分がいることに気付く。
昔は何もしないで一日が終わった日もあったのに。

あれから何が自分の中で変わったのだろう。

ホームレスにも2種類いることが分かった。
余儀なく家無しという状況に追い込まれた者と自ら追い込んだ者。
それは自分の人生を嘆いている者と楽しんでいる者という分類でも分けられる。
見分け方は顔で一目瞭然だ。

ブライアンの顔には折れない意志の強さがあり、彼には彼にしかない表情が出せる。
今こそ自分の仮面を脱ぎ取るべきだと察した。

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